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制度と現実のはざま 鈴木廣直さん -その1-

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JAグループ福島肉牛振興協議会 会長 鈴木廣直さん

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JAグループ福島肉牛振興協議会 会長 鈴木廣直さん

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平成10年の全国肉用牛枝肉共励会で日本一の栄誉である名誉賞に輝くなど、その美味しさが全国の方々に認められている福島県の牛肉。
しかし東日本大震災直後の7月に、放射性物質に汚染された稲わらを給与された牛の肉から基準値を超える放射性物質が検出されたことをきっかけとして、それこそ福島県の畜産の存続にかかわるほどの危機にさらされ、3年余りの月日が経過した今もなおその影響は続いています。

それでも、給与される飼料の検査や牛舎の管理、県による定期的な立ち入り検査を行うなど徹底した飼養管理を行い、出荷する牛については、“全頭”放射性物質検査を実施。さらにその結果を全て公表するなど、福島県の畜産に関わる方々は血のにじむような努力をされ、信頼の回復に努めています。
 
その福島県の畜産、特に肉牛に関わる震災後の怒涛のような日々と今後の展望について、大玉村の畜産農家でJAグループ福島肉牛振興協議会 会長の鈴木廣直さんにお話をお聞きしました。

 
本日より4回に渡ってお届け致します。
その1 制度と現実のはざま                (2014年6月12日公開)
その2 マスメディアの持つ影響力             (2014年6月13日公開)
その3 牛肉の魅力を発信する               (2014年6月16日公開)
その4 質・量兼備の福島の牛               (2014年6月17日公開)
 

全ては繋がっている

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鈴木廣直さん

原発事故ばかりクローズアップされますが、地震による直接的・間接的な被害も相当あったと鈴木さん。
「津波の被害を直接受けた地域はもちろんですが、地震によって牛舎や施設・機器が壊れるなどした農家はかなりいました。
また、直接的な被害が無くとも停電や断水、燃料不足によって思うように飼養出来ない事例も多かったです。
そして飼料への影響はかなり大きかった。実は飼料を集積して配送する大供給基地が石巻で、当然津波の被害は甚大。やむを得ず給与する飼料を減らしたり代替品を用意したりして2か月ほどしのぎました。ただ、牛にそのストレスが重くのしかかり肉質にもかなり悪影響があったと思います。」

酪王乳業株式会社の大竹さんとのお話にもあった通り、生き物を扱う農業、特に畜産の分野においては、工業製品のようにラインを再稼働させればある程度の流れが再開できるというわけではないのです。
また、私が改めて痛感したのは、世の中は繋がっているということ。津波の被害を直接受けずとも、供給地がダメージを受ければ間接的にダメージを受けるということです。
末端は大丈夫だから安心ということではなく、どのような繫がりがあるのかを再確認し、流れの中でボトルネックを解消していく必要性をこの震災から学ばなければならないと思いました。

よりよい取組みにするための相互コミュニケーション

とはいえやはり原発事故の影響は大きいものでした。
 
「事故発生当初、私たちも放射性物質のことは、当然と言えば当然ですが、良くわかりませんでした。
それは行政も一緒で、ある県内の自治体では4月に県産の牛肉から放射性物質が検出されたということで大混乱に陥ったのですが、結果的には誤検出だったということで、全くの手探り状態でした。」と鈴木さん。
 
「残念ながら2011年の7月に汚染された稲わらを給与された牛の肉から放射性物質が検出されたわけですが、これはいくつかの見逃しがあって発生したものだと思います。

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稲わらは雪が降る会津地方や中通りでは雪が降る前に田んぼから回収します。ですから放射性物質が降り注いだ時には、もう田んぼに稲わらは無かったと判断した。
ところが、雪が少ない浜通りなどの地域では稲わらは3月以降に回収する農家もいる。そこを見逃してしまったのだと思います。」と当時を振り返ります。

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セオリーからいうと雪が降る前に稲わらの回収は終わっているはずかもしれませんが、実は現実においてはセオリー以外のものもあった。
平時の判断では問題ないことでも、こういった危機的状況下においては致命的になりかねない、初動において起きうる可能性があるものをしらみつぶしに解消していくことが求められることを、考えさせられました。

また、牛肉の価格補償については、「素牛代と日々の飼養費などを計算し生産原価を決め、肉牛一頭当たりの補償の基準価格を算出し、それを下回った価格でしか売れなかった場合は補償されるようになりました。」以前よりも補償の仕組みが簡素化されてありがたいという声が多いそうです。
 
ただその基準となる価格が、品質の高い肉の取引でも適用されてしまうそうで、品質の高い肉のカテゴリーの中では風評により他県産の肉と明らかな価格差が出ているにもかかわらず、元々の値段が一般のものよりも高いため基準とされる価格を上回ってしまい、補償の範囲外となってしまうこともあるようです。
つまり高品質の肉をつくっている農家ほど補償の枠組みから外れてしまうので、そこのフォローを検討しているとのこと。

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「制度というものに一長一短があるのはある程度仕方ないと思っていますが、いいものを世の中に送り出した人が報われるような制度にもなってほしいと思っています。
我々もこういった点について是正を行ってほしいと要望はしていきますし、制度をつくる側の方々にも農業の現場の声をより多く聞いていただいて、お互いに連携をはかっていきたいですね。」
 
農業に関わる人々に立場は様々ありますが、全員が復興のために懸命に取り組んでいることは間違いありません。よりよい明日のために、相互のコミュニケーションがより一層求められていることを改めて実感しました。

 

 
次回、マスメディアの持つ影響力 は6月13日にお届けいたします。


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