
“野菜スイーツ”。今でこそ提供しているお店も珍しくはないですが、その先駆けとなったお店があります。そこは中目黒に店舗を構える「パティスリー ポタジエ」。2006年に世界初の野菜スイーツ専門店として開店しました。

野菜スイーツの一番の人気商品
「グリーンショート・トマト」
その「パティスリー ポタジエ」のオーナーパティシエが今回対談させていただいた、柿沢 安耶(かきさわ あや)さん。
野菜寿し専門店『野菜寿し ポタジエ』や厳選されたオーガニック野菜を使ったお惣菜、スープ、カレー、グリーンスムージー等がテイクアウトできる『ポタジエ マルシェ』をオープン。
「農業」や「食育」にも造詣が深く、各種イベントの企画や講演、執筆活動などを通じて情報発信するなど、積極的に活動なさっています。
柿沢さんは震災前から福島県の農産物を使用したスイーツを手掛けるとともに、直接農家さんのもとに足を運び、また地元の学生と講演や実習を通じて交流。
震災後も積極的に福島を含めた被災地への支援を行ってくださっています。
今回は福島県の農作物への印象やエピソード、震災後の活動や今後の展望などについてお話をお聞きしました。
今回はその3です。
その1 「外」から感じる魅力を詰め込んで、「中」の人に実感してもらう(2013年12月16日公開)
その2 都会で感じられること地方で感じられること (2013年12月17日公開)
その3 途切れぬご縁 (2013年12月18日公開)
その4 手に取りやすいように (2013年12月19日公開)
その5 ギャップに驚きと感動がある (2013年12月20日公開)
前向きな方たちが多くて
残念ながら発生してしまった東日本大震災とそれに伴う原発事故。その発生後の福島のかかわりについて伺いました。
「震災後初めて福島県を訪れたのは7月で、伊達市にお招きいただいて講演をさせていただきました。その時に交流会もあったのですが、その場で農家やお店の方など食に携わる方々と直接お話もさせていただきました。
呼んでいただいた理由として、これから農業を続けていくべきかどうかなど将来に悩みを抱えている食に携わる方々を元気づけるということだったのですが、私にそんなことができるのかと不安もありましたし、私自身も今後どうなっていくのかということはわかりませんでしたので、安易なことは言えないなという思いでした。」

確かに4か月しかたっていない状況では、そのように思われるのも当然のことです。
「でも、凄く前向きな方たちが多くて、これからこういう事をしていきたいんだけれどもどうしたらいいのか、といったお話が聞けたので、逆にこちらが安心したというか、そういう部分がありました。」

もちろん全員が全員前向きな考えを持てていたわけではなかったでしょう。
しかしあの時の私は、様々な専門家の方達の話を聞いて何とか活路を見出したいという強い気持ちがありました。もちろん今でもその気持ちは震災前とは比べ物にならないくらいあります。
その真剣さ貪欲さ素直さは、福島に生まれた大きな可能性でもあると思いますし、その時の柿沢さんのお話は、参加された食に携わる方たちに大きな気づきと希望を与えたことは想像に難くありませんでした。
想いをかたちに
そしてそこで生まれたご縁が結実します。2012年9月6日、日本屈指の伊達市の「桃」とさわやかな酸味と甘さが特徴の南会津が誇る「南郷トマト」、この二つが柿沢さんの手によって融合します。
それが「“ふくしま”の旬 桃とトマトのムース」です。
ムースの上に乗るミルクゼリーは福島県の形をあしらい、そしてそこに飾られる星はそれぞれ伊達市と南会津町の位置を示しています。
まさに柿沢さんの福島に対する思いそのものを表していると言えるでしょう。

「凄く反響もあって買っていただける方も多かったので、それもまた安心した部分でもありました。」と笑顔の柿沢さん。

風評被害が世の中を賑わしていた当時だけあって、福島というだけで手に取っていただけないのではないだろうかという不安があった中、手に取ってもらえ、さらに応援の声も届いたという嬉しさがあったそうです。
柿沢さんが心から福島県のことを想ってくださっているのが、その姿から溢れんばかり伝わってきました。
途切れぬことのないご縁というものは、何か大変なことが起きた時に、その大きな支えになってくれるのだ、そのことを思い、感謝しました。
次回、手に取りやすいように は12月15日にお届けいたします。