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想いを作品に 漫画家 端野洋子さん -その4-

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はじまりのはる

福島県の高校の農業科に通い未来を模索していた少年たちが、あの3月11日の東日本大震災を境に激変した福島県と福島県の農業の環境に翻弄されながらも前に進む姿を描いた漫画「はじまりのはる」。
講談社の月刊アフタヌーンで連載され話題を呼び、先日単行本化されたこの漫画のことをみなさんご存知でしょうか?
 
「はじまりのはる」の作者は端野(はの)洋子さん。福島県の県南地方ご出身で、大学生活を経て再び県南に戻り執筆活動を行っていらっしゃいます。
 
http://afternoon.moae.jp/lineup/193
 

今回は端野さんに、「はじまりのはる」を作成するにあたって経緯やその想い、これからの執筆活動についてお話をお聞きしました。
 
今回はその4です。
その1 まるで回収される伏線のように        (2013年11月20日公開)
その2 人間を描くよりも牛を描く方が楽しいんです  (2013年11月21日公開)
その3 「共有」と「知識」             (2013年11月22日公開)
その4 想いを作品に                (2013年11月25日公開)
その5 自信が無くなったらおしまいだ        (2013年11月26日公開)
その6 そんなになるまで待っていられない      (2013年11月27日公開)
 

私も「はじまりのはる」の単行本を拝読させていただいたのですが、あの時の現場の状況に忠実に綿密に調べてあるな、そう感想を抱きました。
 
その点について端野さんは、
「私は自分自身のこれまでの人生について、漫画家としても中々目が出なかったなどですけれども、コンプレックスを抱いていました。
ですからその裏返しとして、大きな出版社やメディアの人というのはもっとしっかりしているんだろうと、非常に優秀な方々が揃っているんだろうと、そう思っていました。
しかしいざ震災を迎えてみると“あれっ?”と。
確証が取れていないもしくは基礎知識がないまま“~の恐れがある!”などと言ってしまっている所も多かったし、怖い怖いと書いていれば売れると思っているのでは?と感じるものも数多く見受けられました。
ですからもしかすると、私が思っていたよりもメディアの皆さんも混乱しているのかなって、そう感じたんです。」
 
もちろんしっかりと取材して現場の状況をしっかり伝えている方々もいらっしゃいました。しかし残念ながら、現地にいる身としてそして農業を生業にしている身として、
“それは明らかに違うどころか大いに誤解を招く”そう思わざるを得ない情報を発信していた、しかもそれなりに名の通った方々がいらっしゃったのも事実でした。
 
「そして福島の現状を正しく理解してほしいとの思いで、必死に現場の人が情報発信しているのを見て、
これは外部の人間に任せていてはダメだなと、福島県民がやるしかないんだと、その当時そう強く感じていました。
ですから“実際はこうだよ”というのを、畜産学部の学生ならこの程度は知識を持って、そして調べていますよというのを、
もし今福島の酪農のことについて書くなら最低限この程度のラインのことはやって欲しいんですというのを、
そういう想いをこめて漫画を書きました。」
 
端野さんは震災後に流れた福島の畜産関係の憶測に触れ、畜産のことを少しでも知っていればあり得ないことがすぐにわかるものなのに、
あたかも本当であるかのように拡散していったことに大変な憤りがあったことを熱く語られました。
 

そういった憶測を拭い去ろうとする場合は得てして、その不正確さを指摘するものの論戦となりあげく感情的なもつれをもたらすといったことになりがちです。震災後そういった例は数多く見てきました。
端野さんの場合はそれを「はじまりのはる」という作品に昇華させました。教科書的ではなく物語として、しかし現場の実情をしっかり踏まえそして正確な知識をもとに。
作品に対して賛否両論がもちろんあったでしょうが、こういったアプローチの仕方というものは、福島県の農林水産の実情を正確に理解いただくうえで非常にわかりやすく受け入れられやすいのではないか、そのように私は思いました。
 
「単行本として形に残ったからといって、福島県の畜産についてすぐに理解してもらえるわけではないということはもちろんわかっています。
しかし、単行本化されたということ自体がそれなりに世間の方々から反響があったということでもあり、議論の俎上に上ったということでもありますから、
漫画として発表したことは一定の役割を果たしたと思っています。」

 

 
次回、自信が無くなったらおしまいだ は11月26日にお届けいたします。


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