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人間を描くよりも牛を描く方が楽しいんです 漫画家 端野洋子さん -その2-

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はじまりのはる

福島県の高校の農業科に通い未来を模索していた少年たちが、あの3月11日の東日本大震災を境に激変した福島県と福島県の農業の環境に翻弄されながらも前に進む姿を描いた漫画「はじまりのはる」。
講談社の月刊アフタヌーンで連載され話題を呼び、先日単行本化されたこの漫画のことをみなさんご存知でしょうか?
 
「はじまりのはる」の作者は端野(はの)洋子さん。福島県の県南地方ご出身で、大学生活を経て再び県南に戻り執筆活動を行っていらっしゃいます。
 
http://afternoon.moae.jp/lineup/193
 

今回は端野さんに、「はじまりのはる」を作成するにあたって経緯やその想い、これからの執筆活動についてお話をお聞きしました。
 
今回はその2です。
その1 まるで回収される伏線のように        (2013年11月20日公開)
その2 人間を描くよりも牛を描く方が楽しいんです  (2013年11月21日公開)
その3 「共有」と「知識」             (2013年11月22日公開)
その4 想いを作品に                (2013年11月25日公開)
その5 自信が無くなったらおしまいだ        (2013年11月26日公開)
その6 そんなになるまで待っていられない      (2013年11月27日公開)
 

自分じゃない何かを求めていた

漫画家を志してからすぐに、農業や酪農を題材に漫画を描き始めたのかお聞きしましたが、
「いえそんなことはありません。全く関係のない、女子中高生が主役の青春ものを描いていました。そもそも初めて新人賞に作品を送ってからデビューするまでに10年くらいかかりましたから。」と端野さん。
なんとかデビュー作が読み切りで掲載されるも、その後2年間程度はなかなか掲載までは至らなかったそうです。
 
それから農業・酪農を題材にするまでの過程をお聞きしました。
 

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「一般的に漫画家を目指すというと東京に出て、有名な漫画家さんのアシスタントなどを務めながら作品を編集部に送るという形を取るのですが、個人的に東京には住みたくありませんでした。」
その理由が「だって県南より暑いところになんて住みたくなかったんです!」と本気でおっしゃるので、思わず笑ってしまいました。
 
「自分の地元で漫画家を目指すとして東京の人より何がアドバンテージであるかと考えた時に“身近に題材があること”だと思いました。
そしてせっかく大学で学んできたことであるし、酪農を題材にしてもそろそろいいのではないか、とも思ったのです。いや、単にネタ切れだったということもあるんですけど」そうおっしゃる端野さん。
 
私は率直に、なぜ最初からそうしなかったのか外から見ると意外な感じがしますとお伝えしました。
端野さんは「自分のことが好きになれない時期ってあるじゃないですか。多分それがずっと続いていて“自分じゃない何か“を求めていたんだと思います。」
 
私は、自分と向き合えるようになったんですね、と少々偉そうなことを言ってしまいましたが、端野さんが檜舞台に出る上では、そのように思えるようになるまで時間が必要だったのだなと思いました。
もしかすると漫画家を目指していた当初から農業・酪農を題材にしていたら、端野さんの作品が日の目を見ない可能性もあったのかもしれません。
積み重ねた年月すなわち時間が、あたかも上質のワインの熟成を促すのに必要であるのと同じように必要だったとするならば、実に趣がある話だなぁと、ロマンティックな感じをその時抱きましたが・・・

「私、人間を描くよりも牛を書く方が楽しいんです。それに気づいたのが2010年だったんです!」と端野さんが唐突におっしゃるのを聞いて、ロマンティックが笑いによってガラガラと崩れ去りました。

原点に戻る、そして・・・

何か旅をしながら最終的に原点に戻ってきたような、そんな経験をされた端野さんが満を持して発表したのが「ミルクボーイ」。
農業科に通いながら未来を模索していた少年たちが、酪農を通じて成長していく姿を描いた作品です。
 
その当時は、農業や酪農を題材にした漫画というものが少ないこともあり、また端野さんにとって身近にある題材であるうえ、
実際に大学で勉強した裏付けのある知識をもとに書かれていることから、酪農を知らない方々にとって新鮮に映り、話題を呼びました。
 
いざ、新たなる出発を果たした端野さんでしたが、その時が来てしまうのです。
そう2011年3月11日が。

 

 
次回、「共有」と「知識」 は11月22日にお届けいたします。


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