各業界のキーパーソンにお話をお聞きする「野菜ソムリエ藤田が聞く」。
今回はシリーズで、実際に農林水産業およびその加工に携わっている方々からお話を伺う、
「現場に聞く」を5回に渡ってお送りします。
第一弾 キノコ生産者 中島康雄さん (2013年5月7日公開)
第二弾 水産加工業者 小松浩二さん (2013年5月8日公開)
第三弾 水産加工業者 賀沢信さん (2013年5月9日公開)
第四弾 有機栽培農家 佐藤吉行さん・東山広幸さん (2013年5月10日公開)
第五弾 株式会社ジェイラップ 代表取締役 伊藤俊彦さん (2013年5月13日公開)
今回は-第二弾-
主にかまぼこを生産していらっしゃる、いわき市「株式会社貴千」の営業/広報担当 小松浩二さんです。
地場産のイメージが逆に
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震災前、「貴千」では板かまぼこが主力品で、販売元に委託されて他社ブランドを生産、
いわいるOEM生産を行い、大量に築地や小田原などを始めとする全国に出荷し、食卓を支えていました。
しかし3月11日がやってきます。
震災の影響は甚大で4月10日にやっと復旧したのもつかの間、
4月11日に巨大余震が襲いかかり、復旧までさらに時間を要したそうです。
その間に製造を委託していた業者は、供給元を別の産地にシフトしていました。
それは致し方ないことではあったのでしょうが、売上げは半分まで落ちたとのこと。
また、かまぼこの原材料のすり身は海外からの輸入品だったにもかかわらず、
震災前は利点であった福島県地場産品のイメージによって、
逆に原発事故に伴う風評が発生し追い打ちをかけたことは、皮肉としか言いようがありません。
まさに危急存亡の事態に追い込まれたのです。
生産量日本一だが
この危機は会社の、そして福島県のかまぼこ業界の抱える問題を、
一気にあぶりだす結果ともなりました。
実はいわき市小名浜は板かまぼこ生産量日本一を争うほどの大生産地なのですが、
地元の方はほとんど知らないとおっしゃいました。
それは前述したように、そのほとんどすべてが委託品で、県外に流通していったからです。
すなわち、「日本一」を狙える素地があるにもかかわらず、
それを積極的にアピールする必然性がなかったのでしょう。
また、委託先からの要望をもって製造するために、
会社としての「こだわり」が出しにくい環境でもありました。
もちろんこれは決して悪いことではなくて、日本中の食卓を支えるのも大きな役割でしたし、
地元の主力産業として地域経済の一翼を担ってきたのは誇るべきことです。
しかしながら、「替えのきく商品」を作っていたのでは福島県産品は通用しない状況を、
震災・原発事故は引き起こし、すべては変わったのです。