自らの手で
市場への大量出荷の構図が崩れ会社の存続の議論にもなるような大問題。
しかしそういう時だからこそ、真の意味での試行錯誤と知恵が生まれます。
今までは、商品の要望は大消費地から送られてくるものでしたが、
これからは営業・商品開発・売り出し方全てを自らが設計し、付加価値を高める必要性に迫られました。
「どうやって手に取ってもらえるのか?」という試行錯誤は、
自分の物を売っていく気概となり、その価値を知り自信を持つきっかけとなりました。
それがもともと備えていた技術と結びつき、全く新しい理念とそれに基づいたアイディアを生み出していきます。
いままで大消費地という「外」に向いていた意識を、
地元という「内」により強く向けるようになりました。
日本一のかまぼこを目指しながらも、
自社のかまぼこを「普段使い」してもらえるように食べ方の提案や地元農家とのコラボレシピを考案したり、
外注では伝えにくかった商品デザインも社内で実行、はたまた「かまぼこ写真集」を作成など、
今まででは考えられなかったことを次々行っていきました。
いえ、考えてはいたかもしれません、窮地に陥ったからこそそれをバネに実行できたのではないかと、私は思います。
その甲斐もあって徐々に地元に「普段使い」のものとして認知されていくとともに、ネット販売やイベントなどを通じて、
他の誰のものでもない「貴千」の商品として全国に認知されていくのです。
食文化の継承
より地元に目を向けるという意思は、震災後の新商品にも表れています。
残念ながら福島県の港には「さんま」が水揚げされていないのが現状です。
それは食文化の危機でもありました。
いわきの漁師料理に「さんまのポーポー焼き」というものがあります。
さんまをすり身にして、しそやしょうがと混ぜて焼く、つみれのような料理です。
この「さんまのポーポー焼き」を作れない・食べられないことは、
漁が出来ないということと共に、住民の方を意気消沈させていました。
そこで、考え出したのが、さんまのポーポー焼きの「かまぼこ」です。
社内の若手チームが中心となって、専務の家で昔から食べられてきたレシピ通りに、
そしてかまぼこをさんまの形にするなどアイディアを加えながら商品化しました。
そしてそこには、いわき・福島のキーワードに感じ入ってくれる人のために、
自信を持って贈答品として送ってもらえるように、そいういったメッセージも込めてあるそうです。
食文化の継承にはこのような形もあるのか、私は人間の発想力には限界はないと感じ入りました。
理念と姿勢が問われている
必ずしもうまくいっている所ばかりではないと小松さん。
一昨年末は爆発的に売り上げが上がったそうですが、その応援熱も落ち着きつつあります。
しかし、どうやって手に取ってもらえるかという試行錯誤によって蓄積されていくノウハウは、
大きな価値になるのではないか、ともおっしゃいました。
実は小松さんは地元出身ではいらっしゃるものの、海外赴任経験等を経てUターン、
さらに全くの異業種を経験されたうえで、震災後に入社されています。
その経験があったからこそ出来る、既成概念にとらわれない柔軟な発想と視点がそこにありました。
その柔軟な発想・視点と、以前からの在籍する方の改めて生まれた
「強く地元に生きる意志」が大きな推進力になっていると感じました。
今、理念・姿勢が試されている真価が問われている、
そうおっしゃった言葉は確実に行動となって表現され、そして今まさに形作られつつある、
そういう姿を見ることが出来たのは私にとっても励みになりました。
株式会社貴千
【URL】http://www.komatsuya3rd.com/
『シリーズ現場に聞く~水産加工業者 賀沢信さん 編』は5月9日(木)にお届けします。