Quantcast
Channel: ふくしま 新発売。
Viewing all articles
Browse latest Browse all 945

東洋大学 社会学部 准教授 関谷直也さん 編 -その2-

$
0
0

「風評被害」。
原発事故後にこの単語をいったい何度聞いたことでしょう?
福島県の「食」にかかわる産業にとって、この「風評被害」こそが、
最も高い障壁のように立ちはだかっているように感じられます。

メディアや書籍・新聞などで見ない日は無い「風評被害」。
しかしながら、そもそも「風評被害」とは何なのか?原因は?解決策は?過去の事例は?
こういったことが語られているシーンはあまり目にしません。
そういった観点から、今回は震災後に書籍「風評被害-そのメカニズムを考える」を執筆された、
東洋大学 社会学部 メディアコミュニケーション学科 准教授 関谷直也さんにお話を伺いました。

 

今回は-その2-です。
その1  風評被害とは             (2013年4月30日公開)
その2  きっかけとして自分たちを振り返ろう  (2013年5月01日公開) 
その3  意識されていることをチャンスに    (2013年5月02日公開)

 

 

大規模そして長期間

今回の原発事故がもたらした「風評被害」の特徴について伺いました。

1、2年という長期にわたってテレビ・新聞などの様々なメディアに取り上げられ、
人々がさまざまな原発事故の問題について議論し合うようになるような、
これだけの大規模な事故は、“原子力”を外したとしても、戦後初めてだと思います。
その不安感・安全かどうかということに対する人々の意識の変化、
これは過去比べようがないほど大きな事故だったのです。
ですから、それだけ影響が大きかったということがまず一つ、と関谷さん。

もう一つは、長期にわたって原発近くの高線量の地域がある程度残るだろうと考えると、
そのことによってその周囲の地域に行くことへの不安感をお持ちになる方や、
生産された農産物に不安を抱かれる方が出てくる、
そのことに対しては長期間悩まされ続けなければならないでしょう、といったこともおっしゃいました。

大規模であること、そして長期間にわたって対策を打ち続けなければならないこと。
確かに、理不尽なことではありますが我々が直視して受け止めなければならない厳しい事実です。

 

きっかけとして自分たちを振り返ろう

今の福島県で起きていることは過去に類を見ない大規模な事態ではありますが、
これから福島県が復興に向かっていくうえで、過去の事例からヒントになるような事柄が無いか伺いました。

2001年9月11日に発生した「アメリカ同時多発テロ事件」。
この影響で海外旅行のために飛行機に乗ることを控えるなど影響が出たのですが、
国内で最も大きな影響を受けたのは沖縄県です、と関谷さん。
沖縄は「観光」が産業として大きな割合を占めています。
しかし、離島ですから「飛行機」で行かなければなりませんが、
それがゆえに「同時多発テロ」が大きな不安感を煽ったのです。

実は私は、「同時多発テロ」が起きた次の日に飛行機に乗りました。
その時、今まで感じたことが無いくらいの不安に襲われたので、この状況は身にしみてわかります。

その当時、修学旅行先として北海道とともに沖縄も増えてきた時期でした。
しかしそれに水を差すような「同時多発テロ」。
学校の行事や給食といったものは、一人でも保護者の方が反対すると、
出来るだけそれを避ける側に動いてしまうものです。
その結果、沖縄での修学旅行のキャンセルがものすごく増えてしまったのです。
関谷さんはそういったことをおっしゃいました。

確かに、今の福島県の“観光”産業が陥っている状況に酷似していると私は考えました。

しかし、沖縄はその状況に黙っているのではなく、
一年か二年後、テロの恐怖が徐々になくなっていく頃を目指して、沖縄の観光資源を見直すようになったのです。
例えば、いままであまり意識していなかったサンゴ礁の保全に着目し、
観光資源との目玉となるようにサンゴ礁の保全を頑張るといったことであるといった、
沖縄の観光をどうアピールすべきかもう一度振り返って見直していく動きが出てきたのです。
その結果、「同時多発テロ」の2年後に観光客数は回復しその後は右肩上がりに伸び続けているのです、と関谷さん。

何か事故やトラブルがあった時に、
それをきっかけとして自分たちの産業を振り返り自分たちの産業の良いところを発見していく、
そういった方に持っていけるのだとすれば、長期的には「風評被害」というものを克服できるのだろうと思います。

この言葉は、本当に重いものがあると思います。
どうしても短期的な視野で以前の状態に戻すための方策ばかりを取りがちです。そういったことももちろん大事なのですが、
これを機に今まで抱えてきた問題や逆に気付かなかった良いところを見つめ直す、
そしてより良い形になるように改善していく。
まさしくこれが「復興」なのではないでしょうか?

 

次回、意識されていることをチャンスに は5月2日(木)にお届けします。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 945

Trending Articles