県南地方に位置する鮫川村は、里山の保全活動に力を入れています。
その活動に継続的に参加・協力しているのが東京農業大学(世田谷区)の教員や学生たちです。
鮫川村と東京農大のそうした繋がりから、東京農大キャンパス前にある同大の「『食と農』の博物館」では定期的に鮫川村の物産市「手まめ市」が開催されています。手まめ市を運営するのは、鮫川の農産物加工・販売所「手・まめ・館」のスタッフ、そして東京農大の学生ボランティアの方々です。
9月15日と16日の土日にも手まめ市が開かれるということなので、早速、世田谷区上用賀にある「『食と農』の博物館」に出向いてみました。
忙しそうにお店を切り盛りしていたのは、二人の看板娘。そのうちお”姉さん”の方、「手・まめ・館」のスタッフ、蛭田光枝さんによれば、「以前から交流のある東京農大には毎月のように出店してますし、手・まめ・館は県内外に結構出て行っているんですよ。そこで品物を買ってくれた首都圏のお客さんから、『あれ、おいしかったから注文したいんだけれど』なんていう連絡が入ることもあるんですよ。」とのこと。首都圏での出店は、鮫川村のPRに大いに貢献しているようです。ちなみに、看板娘の”妹さん”のほうは、東京農大の学生さんとのことでした。
手・まめ・館の蛭田さん(右)と東京農大のボランティアスタッフの阿部さん(左)
店先を見ると、「豆で達者なむらづくり」を標榜する鮫川村だけあって、大豆を使った製品がズラリと並んでいます。
「手・まめ・館は、鮫川村の特産品を売るだけでなく、自分たちで加工もしているんです。村で取れた大豆だけを使って豆腐や油揚げも作るし、醤油や味噌もつくっているんです。」と蛭田さん。
後で知ったことですが、このように大豆から豆腐や醤油、味噌をつくるための技術指導でお世話になったのも東京農大なのだそうです。
鮫川村産の大豆を使用して作られた豆腐、油揚げ、おから、そしてきな粉
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もちろん醤油も鮫川村の大豆で。くどいようですが(笑)味噌も鮫川村の大豆を用いて手・まめ・館で作っています。
ところで、店先で話を伺っていると、蛭田さんが気になることを口にしました。
取材に訪れた9月15日は、最寄り駅の小田急線・経堂駅の近くでも「手・まめ・館」が出店しているというのです。しかもそちらは初めての出店だといいます。それでは、ということで早速経堂駅へ向かいました。
経堂駅から東京農大方向へ南に延びる商店街は「農大通り」と呼ばれています。行ってみるとその一角に、確かに「手まめ館」「福島県さめがわ村」の幟が見えました。
こちらには、「手・まめ・館」の館長、圓谷實さんがいらっしゃいました。
「きっかけは、こちらの商店街さんから『ぜひ出店してくれ』と声をかけられたことなんです。農大には何度も来ているから、そこで鮫川村の特産品のよさを知って、使ってくれていたお店も商店街の中にあったようでね。しかも商店街さんの方で、われわれが出店することを知らせるチラシを作って新聞折り込みで配布してくれたんです。そのお陰だと思うけど、11時に開店したと思ったら、30分後には野菜はほとんど完売です。」
「農大通り商店街から声をかけてもらって本当にありがたい」と語る圓谷館長
確かに、テントの中にあるテーブルの上には、数えるほどしか商品が……。商店街のパワー、恐るべしです。
商店街が用意してくれたチラシの効果か、ほとんどの品物が売り切れに!
経堂農大通り商店街振興組合の理事長・川村昌敏さんにもお話を伺いました。
「農大の学生と話をしている中で鮫川村との接点が見つかったんです。われわれは場所を提供するくらいだからコストはそれほどかかる訳じゃない。チラシのコスト?それくらいは負担しないと『お手伝い』にもならないでしょう(笑)。鮫川村の特産品を買いにきてくれたお客さんが、ついでに近くのお店で買い物をしてくれれば商店街の活性化にも繋がるわけだしね。」
何とも男気を感じる言葉。これこそ、風評被害に苦しむ県内の自治体と被災地を支援しようという東京の商店街による理想的なコラボレーション、とひとり感じ入ってしまいました。
ただしこうした活動は継続が命。「手・まめ・館」の圓谷館長と農大通り商店街の川村理事長は、さっそく次回の開催について相談をはじめていました。