
2015年2月4日
以前、第7回今の福島を見に行くモニターツアーで伺った川内村の「いわなの郷」で、川内小学校の総合学習の授業が行われました。私もお招きいただき、その様子を見学させていただきました。
「いわなの郷」は、いわな釣りの体験、そして釣ったそのいわなをその場で調理して食べることができる施設です。こちらではいわなの養殖も行っていることから、川内小学校の児童のみなさんに養殖の作業の一部を体験してもらうことになったのです。
1回目の授業は昨年11月に「採卵」の作業、2回目の授業は同12月に「検卵」の作業を体験しました。
11月、採卵の体験を行うためにスクールバスでやってきたのは、川内小学校の3、4年生の11人の児童たち。この日は風が強く、コートを着ていても寒いというのに、なんと半袖で元気よく走りまわっている子もいました!「子どもは風の子」って本当なんですね。
震災後、川内村は避難した方が多く、川内小学校の児童数もかなり減ってしまいました。しかし、少しずつではありますが毎年児童数は増えており、新年度からはまた新しい仲間も増えるとのことです。
体験の準備をした児童たちは、「よろしくおねがいします!」と大きな声で挨拶。みんなとっても礼儀正しく、元気いっぱいです。

この日体験する「採卵」という作業は、メスのいわなのお腹を押して卵を外に出し、そこにオスの精子をかけて受精させるというものです。


採卵をするビニールハウスに入る前に足元の消毒をし、養殖を行っている渡辺さんの説明を聞いて体験開始です。児童のみなさんは興味津々な様子で、作業に真剣に取り組んでいました。


麻酔をかけて動かなくなったメスのいわなのお腹をやさしく押していくと、卵が出てきます。上手に押すと次々に勢いよく出るため、「うわー!出たー!」と楽しそうな声が上がりました。中には、「オレ、もう一回やりたい!」という男の子も…!
この卵に精子をかけていきます。


「精子をかける作業は「いわなの郷」の渡辺さんが行いました。
渡辺さんが「卵に精子をかけると、いわなの赤ちゃんが生まれるんだよ」と説明すると、みんな少し不思議そうな顔をしていました。
少し雪が積もる12月の2回目の授業は、前回よりもさらに寒く、私はガタガタ震えていましたが、川内小学校の児童のみなさんはへっちゃらな様子で、凍っているアスファルトを楽しそうに滑っていました。
今回は「検卵」作業の体験です。
「検卵」とは、受精したものと、そうでない物を分ける作業です。
渡辺さんによると、受精できている卵は約8割とのこと。今回の作業では受精した卵とそうでないものを手作業で分けていきます。
説明を聞いて、早速作業開始です。
児童のみなさんは全員、前回のような緊張はなく、真剣な表情で集中して取り組んでいました。



受精したものには、卵の中に目があるので、一目で確認することができます。
よく見ると黒い点がみえます。これが「目」です。この点が無く、白く濁ったものを取り除いていきます。
細かい作業なので集中し続けるとすぐ疲れてしまうかと思いきや、みなさんは「まだ、できるよ!」と1時間弱一生懸命作業をしていました。
だんだんと慣れてくると、より早く、より上手に仕分けできるようになりました。
児童のみなさんの手際の良さには渡辺さんも驚いていて、「作業が進んで、とっても助かりました」と仰っていました。この「検卵」の作業は、卵4万個分というかなりの量を行わなくてはならないため、とても大変なのだそうです。
この後、卵は孵化から稚魚の育成時期専用の箱の中に入れて大切に飼育されます。1月に孵化し、3月にようやくいけすに放流することができるまでに育ちます。
成魚になれるのは、4万個の卵のうちの約6割だそうです。このように管理された環境でも生まれてくることができなかったり、生き延びることができなかったりする命が多くいるんですね。
川内小学校の児童のみなさんは、3月には孵化した魚をいけすに放流する予定です。
まだ卵のひとつひとつに命があることに実感が湧いていないかもしれませんが、動くいわなの稚魚を見たら、何か新たな発見があるかもしれませんね。
次回のいのちの授業も楽しみです。
いわなの郷
【住所】双葉郡川内村大字上川内字炭焼場516
【TEL】0240-38-3511