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東日本大震災とそれに伴う原発事故は、多大な被害を福島県そして東北にもたらしましたが、このことをきっかけとして“食”に対する向き合い方を真剣に考える動きが各地に出てきました。
NPO法人 東北開墾 もそうした中で生まれたグループの一つ。
そのHPにはこう記載されています。
“私たちはこれまで、衣食住、地域づくりを他人の手にゆだね、観客席の上から高みの見物をしてきたと言えます。誰かがつくってくれるだろう、誰かがやってくれるだろう、と。暮らしをつくる主人公(当事者)ではなく、お客様(他人事)でした。当事者を失った社会から活力などうまれようがありません。
わたしたちは考えました。世なおしは、食なおし。”
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東北開墾では月に一回、「東北食べる通信」という東北各地のこだわりの生産者たちを紹介する定期購読誌を発行しています。
特徴的なのは、その生産者の生産物が、情報誌とセットになって読者に届くという点。
いわく“史上初の食べる情報誌”というところです。
FacebookをはじめとするSNSなどを通じて、読者と生産者とが直接交流を図ることもできるという、単なる情報誌の発行に留まらない、“つくる人と食べる人をつなぐ”取組み。
その理念やねらい、今後の展開について、代表理事 高橋 博之さんにお話をお聞きしました。
今回はその4です。
その1 当事者意識 (2014年3月3日公開)
その2 都市と地方を「どちらも救う」 (2014年3月4日公開)
その3 生産者の生き様を知ってほしい (2014年3月5日公開)
その4 福島から食の変革・新しい芽が出る (2014年3月6日公開)
10年20年30年先の日本の“食”を変える種になっている
「東北食べる通信」では、当コーナーでも対談させていただいた、相馬の漁師の菊池さんやいわきの農家の白石さんと、福島の生産現場も紹介しています。
そこでどうしても気にならざるをえないのが原発事故の問題。私は高橋さんに、福島の生産現場を取り上げることに何か逡巡や気を使ったことが無いか、率直に伺いました。
しばらく間をおいて高橋さんは、
「あんまりなかったですね。」と一言。
「自分は何とかして“なまり”を無くそうと努力するといった風に、東北出身だということを恥ずかしいと思っていました。
東北はずっと都市への人材・食糧・電力などの供給地だった。だから、そういうところに多くの東北の人たちは、引け目や悔しさを感じていたんです。
しかし逆にいうと、都市の繁栄の犠牲になってきたということは、都市経済に依存をしてきたということでもあるんです。だから自立しなければいけない、と。
自立する上で東北の最大の魅力は、この豊かな自然なので、これを活かしていくしかないという時に、その最大の武器を汚されてしまったわけです、特に福島の場合は。悔しいの一言なんですよ。」と高橋さん。
「ただ僕は東北を回っていて、福島から食の変革・新しい芽が出るなと確信したんです。福島では放射性物質検査はもちろんのこと、すべてを包み隠さず“見せる”ということが当たり前になっていますが、それは平時でもやらなきゃいけないことだったんじゃないかと思うんです。
一番大変な所から変革が始まる、一番弱いところ・遠いところ・困っている所から始まるといいますけれども、今で言ったらそれは福島なんですよ。」
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「この数年で福島から出てくる新しいモデルは、たぶん10年20年30年先の日本の“食”を変える種になっていく、そう思うんです。」
私も何度も書いています。震災によって起きたと思っている問題は、実は震災前から抱えていたものが顕在化したものがほとんどだと。
その問題を解決せざるをえない状況に追い込まれた福島だからこそ変革が起きる、高橋さんの考えと私の考えがシンクロするのを、その時感じました。
震災後もつながっている関係は“個”の繋がり
「福島の場合は、マスで勝負すると風評被害で負けちゃうと思うんですけれども、個人の生産者と個人の消費者を丁寧につなげば、風評被害は吹き飛ばせるということが分かりました。
その人の言葉に耳を傾け、その人の生き様を知れば、風評を受けても安心して生産物を買ってくれるんです。」
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震災後もつながっている関係は“個”の繋がりだと言っている人が多かったので、と高橋さんはおっしゃいましたが、私もまさしくその通りだと思います。
もちろん出来るだけ多くの方に福島県産の生産物を手に取って欲しいですし、そういった働きかけも大事だと思います。
それに加えて、個々を丁寧につないでいく、それが実は震災前よりもずっと強固な生産者と生活者のつながりとなっていく、そう再認識しました。
「価値観の転換まで言っているのは福島だけなんですよ。残念ながら他の地域はそこまで行っていない。
今の日本の価値観のままでは将来的には立ち行かないと私は思っています。ですから、価値観まで変えなければならない深刻な状況に陥った福島県だからこそ、大きな可能性があると思うんです。」
東北は課題先進地域
高橋さん達の取り組みは完全には軌道に乗ったわけではないそうです。
「それでも、「東北食べる通信」だけでなく、東北以外の地域からも「●●食べる通信」をやりたいと声をかけてもらっています。僕たちは規模の拡大を目指そうとかそういった考えは余りなくて、同じカルチャーを持った“仲間”が増えてほしいと思っています。」と高橋さん。
「僕は傷を負った東北から日本を再生したいと考えています。東日本大震災によって福島をはじめとした東北は、多くの課題が浮き彫りになった、いわば課題先進地域だと思っています。
だから、その課題の解決を通じて生まれた、東北発の価値観だったりライフスタイルだったり事業モデルを全国に飛び火して広めていきたいんです。それができれば日本を変えることができるし、東北の人たちを勇気づけることにもなりますから。」
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取材先の船でどんこ汁を食べる風景
高橋さんの言葉は本当にわかりやすく、胸にスッと入って来る、そういう説得力がありました。
「難しい言葉を知らないだけです。」と高橋さんははにかまれますが、そういう人柄とそして実際に行動して形にするということが多くの人の支持を集めるのでしょう。
生産の現場と生活者の間をつなぐ取り組みは私もいくつか知っています。その中でも高橋さん達の取り組みは、私にまた一つ新しい視点を与えてくれました。
◎東北食べる通信のWebサイトはこちら
お問い合わせ先メールアドレスはこちら info@taberu.me