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地鶏・あんぽ柿です。
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2013年12月10日
初冬の時期、農村の原風景として家の軒先に吊るされた干し柿が描かれます。
秋にたわわに実った柿を、寒さと乾燥、そして風という気候を利用して加工し、冬の大事な栄養源、味覚として堪能します。
そこでよく疑問として伺うのが、「この時期“あんぽ柿”も干し柿と同じように見かけるけれども、両者はどう違うの?」ということです。
一般的な干し柿は、干して乾燥させて作ります。黒っぽく色が濃くなって硬くなり、糖分が白く粉をふくのが特徴です。
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対してあんぽ柿は、干す前に硫黄で燻蒸(くんじょう)、つまり“いぶす”過程を加えて作ります。そうすると、硬くならず半生のようなジューシーな食感と上品な甘さが生まれます。
(硫黄は乾燥する際に揮発するので毒性はありません。)
蜂屋(はちや)や平核無(ひらたねなし)などの渋柿を使用し、蜂屋は大粒で優しい味わい、平核無は少し小粒で甘みが強くなる傾向があります。
この“あんぽ柿”、福島県が発祥の地であることをご存知でしたか?
あんぽ柿が生まれたのは、福島県伊達市梁川町五十沢(いさざわ:旧伊達郡五十沢村)。幕末から明治にかけて成長産業だった生糸の原料となる養蚕産地として豊かな地域でした。
しかし生糸の需要が減少する兆しが見え始めたため、養蚕に代わる農作物として当地で美味しさに定評のあった柿に着目しました。
柿を加工するにあたり、アメリカで干しぶどうの乾燥に導入されていた硫黄燻蒸を取り入れるなど、長い期間の試行錯誤がありました。そして「あんぽ柿」が誕生したのです。
その歴史はおよそ90年に及び、地元の農家の経営を支えるとともに、冬の味覚として全国に多くのファンを抱えてきました。
また近年では皇室に献上されるなど、ますますその味覚が世の中に広まろうとしていた時、残念ながら東日本大震災とそれに伴う原発事故が発生しました。
放射性物質の飛散によってあんぽ柿は現在も主産地である県北地方を中心に加工自粛がつづいており、長年の歴史を持つあんぽ柿の消滅の危機とさえ思われました。
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樹皮を高圧洗浄機で除染洗浄した柿の木(2012年2月)
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震災発生初年度より厳冬期の樹体洗浄や樹の高い部分を切り落とす強剪定といった除染対応を実施。その後も実証研究と検査体制の構築を進め、今年度より「加工再開モデル地区」を設定。
さらに関係各位の多大なる尽力のもと、世界で初めてとなるあんぽ柿の全量非破壊検査機器を開発し、導入が実現しました。これによって、ついに3年ぶりに加工・出荷を再開することができたのです。
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生産者や関係団体、行政機関や県内外の専門家の方々などによる計り知れない努力、そしてなによりも「あんぽ柿」を待ち望む多くの生活者の方々の応援によって、この日を迎えることとなりました。
満を持して再登場した冬を彩る極上の味、そしてそこに込められた数えきれないほどの想い。
福島県産のあんぽ柿を見かけたら、ぜひ手に取って頂きたいと心から思います。
(記事:コッシー情報員)