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つたえる、のこす。 糸井重里さん 早野龍五さん -その4-

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東日本大震災の発災、そしてそれに伴う原発事故直後。日本中のほとんどの人が放射性物質の知識など持ち合わせておらず、“目に見えない恐怖”に混乱していた頃。
 
そのような状況の中、専門的知識をもって冷静に状況を情報発信された方がいます。
その方は、早野龍五さん。東京大学大学院理学系研究科教授であるとともに、世界で最も大きな物理学の研究所といわれる「CERN(セルン)研究所」でも研究をなさっています。 
 
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その早野さんの情報発信によって日常を取り戻すことが出来た一人、そうお話されるのが糸井重里さん。以前のわたくしとの対談でもわかる通り、震災による被災地の復興に尽力されています。
 
このお二人の対談にわたくしも参加させていただきました。その内容は糸井重里さんの「ほぼ日」にも掲載されていますが、
福島県に住む・福島県の農家であるわたくしの視点で、その対談を振り返ります。

 
今回はその4です。
その1 いつ会うの?いまでしょ!     (2013年9月2日公開)
その2 伝える姿勢ですべてが変わる    (2013年9月3日公開)
その3 アイディアと行動が道を切り拓く  (2013年9月4日公開)
その4 つたえる、のこす。        (2013年9月5日公開)
その5 数字もデータもそして心も     (2013年9月6日公開)
その6 苦しいけど、楽しいこと      (2013年9月7日公開)

地道に伝える

給食の陰膳検査や農水産物の放射性物質検査、そしてコメの全量全袋検査などを通して、福島県で生活するうえで摂取する食品からの内部被曝は、非常に低いレベルにとどまっていることがわかってきました。
 
しかし早野さんは、「人の心の問題ですからデータで不安が完全に払拭されるとは思いません。それを踏まえても、数値としてはまったく問題ないということが不安を感じていらっしゃる方に届いていないのではないか。」と危惧を示されました。
 
その点について「「データとしては、そうではないんですよ」ということを、淡々と出していく。徐々にみなさんに浸透するまで出し続けていって、それを、報道の方にもわかってもらう。そういう段階にあるのかなということを思ってます。」ともおっしゃいました。

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「心配な人は、放射能があろうがなかろうが、気にされているということですよね。
それは、生活している人にとってはちっともおかしいことではない。」と返す糸井さん。
 
そしてお二人の意見は、問題の解決には「時間がかかる」ということで一致しました。

みなさんに、何とかできるだけ早くデータに基づいた事実を知って納得してほしい、その想いは多かれ少なかれ、福島県で食にかかわる産業についていらっしゃる方なら誰もが抱いていることと思います。
しかしお二人がおっしゃるように、「時間がかかる」のが現実です。
こと放射性物質のことに関しては、裏付けのある事実を積み重ねながら地道にお伝えしていくことが、時間がかかるようでいて最も近い道なのではないかと、私は感じました。

残すということ

今回の福島における原発事故においては、チェルノブイリで起きた原発事故で得られた知見から、多くのことを学び実際の対策に生かされたりすることが多々ありました。
 
「だから、今回、福島で起きたことを、正しい形で、何十年か後にも伝わる形で、ちゃんと残しておくというのが非常に大事だと思うんですよ。」と早野さん。
そして実際に、福島県内の医師の方々と協力しながら、福島県の内部被曝の状況をホールボディカウンター(whole body counter:体内に取り込まれた放射性物質の量を体外から測定する装置。全身測定器)で調査して論文に残したのです。(英文)(日本語抄訳
調査・論文には、福島における食品からの内部被曝は、極めて少ないということが示されています。
 
 
なぜ論文を書くに至ったかを早野さんはこう述べられています。

「我々がチェルノブイリのことを学ぶとき、何を読むかっていうと、まず最初に、事故から2年後の1988年に出た国連の科学委員会のレポートを読むわけです。
 
「2013年の国連の科学委員会のレポートには、こう書かれている」というのが、福島の歴史として残ってしまうわけですから、やはりそこにはちゃんとしたデータが出てないと。
いまの福島の実態とかけ離れた変なものが載っちゃったらイヤじゃないですか。」

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そう、このタイミングで「英語で書かれている査読つきの論文」(査読:複数の専門家による論文に対するチェック)が存在しなければ、もしかすると今の福島の現状とはかけ離れたレポートが「福島の歴史」として残ってしまうかもしれなかったのです。
 
この論文が“残される”によって、私たちがチェルノブイリから学んだように、後世の人たちも福島から“正しく残されたデータ”をもとに学ぶことが出来るのです。

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そしてもう一点重要なことがあります。それは食品摂取における内部被曝の議論を「科学」的な視点でとらえてくれたことです。
この早野さんの論文に対しては、福島県内の内部被曝を過小評価しているのではないかといった意見もあります。
しかし、「科学的調査と根拠にもとづいた論文」として提示されている以上、それに対する反証も「科学的」なものでなければ反証になりません。
よって、「科学的で冷静な議論」をすることが出来るようになったのです。これは非常に有用なことだと、私は思います。
 
早野さんをはじめとした、この調査・論文に協力された方々へ感謝の念を抱くとともに、この“残す”ということの大切さを、私たちはもう一度再認識すべきではないか、と私は強く思いました。

 
 
次回、数字もデータもそして心も は9月6日にお届けいたします。


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