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新潟大学 教授 農学博士 野中昌法さん 編 -その1-

原発事故による放射能禍に見舞われた福島県の農業。
苦境に立たされた農業者のために、数多くの専門家が何度も福島に入りご尽力してくださっています。
その専門家の方々の手助けのおかげもあって、
現在福島県の農業が置かれている現状が明らかになってきました。

本日はその福島県農業の現状について、
二本松市東和地域での「ゆうきの里東和 里山再生・災害復興プログラム」の活動に
専門家チームリーダーとして参加されている、
農学・土壌学の専門家、新潟大学の野中昌法教授にお話を伺いました。

 

本日より3回に渡ってお届けします
その1  主体は地元       (2013年5月29日公開)
その2  地元にフィードバックする(2013年5月30日公開)
その3  自信を持ってやっていく (2013年5月31日公開)

 

 

主体は地元

野中さんがこの活動に携わるようになったきっかけは、
震災直後に日本有機農業学会が二本松市の「ゆうきの里東和」を訪問して、農家の方に直接お話を聞いたことだそう。
里山再生・災害復興プログラムの基本的な姿勢として、
農家の方たちが主体となり自主的に取り組むことを専門家の我々がサポートする形でないと効果が無いということになり、
実際に地元の農家の方たちと2か月程の時間をかけて一緒にプログラムを創り上げたそうです。

どうしても、
有識者や専門家の方たちの組み立てたものをそのままトップダウンで実行していく、そういった形が多いであろう中、
野中さんたちのあくまで主体は「地元の農家」という姿勢が、
地元の方の信頼を得てしっかりとプログラムとして継続しているということは想像に難くありません。

プログラムの大きな目標として、森林が汚染されているということで、
農業をするにあたって森林の水を使うことが大きい当地域で、
その森林の、特に人が入る里山の汚染の状態がどのようになっているのかを調べ、
その里山の水を使っている農地の状況はどうなっているのかを調べた、と野中さん。

それをふまえ、農業用水・土壌・作付した作物について生育段階ごとに詳細な調査をし、
放射性物質の吸収を抑制するためにはどうすれば良いかということ、
すなわち、単なる学術的調査・研究ではなく、実際に営農するにあたって
どのような状況でどのような対策をすればよいかという「実学」として役立つ知識を積み上げていったそうです。

更に、地元の人たちが安心して食べていけるということが一番大切なことで、
地元の人たちが安心して食べられるということは、自信を持って生活者の方に農作物を提供できるということに繋がる、
ともおっしゃいました。
その具体的な内容として、単にその農作物そのものを調べるだけではなく、
実際に調製・調理する過程においてどのように放射性物質の状況が変化していくのか、
地元の昔ながらの料理についても含め、詳細に調査していったそうです。

まさに福島の農家が、実際にそこに住む人たちが必要とする情報を、
野中さんのような専門家が、机上ではなく実際に現地に入り、調べ提供し、
互いに意思確認を行うということを繰り返しながら、理想的な協力関係を築き上げてきたのです。
その姿勢は、福島県の農業を復興するにあたっての有識者・専門家とのより良い関係性の構築という面で、
大きな示唆を含んでいると私は思いました。

 

食文化も見直そう

野中さんがかかわるプログラムの特徴的なところは、単に安全性の確認にとどまらないところです。

プログラムに栄養科学の専門家も加わり、
伝統的な食べ物・料理が非常に栄養価が高いということ、お米・大豆の持っている機能性も含めて、
以前からこの地で食べられてきた食材・料理というものが体にいいものであったということをもう一度見直していく、
そこまで行っていらっしゃるとのこと。

原発事故により被った放射性物質の影響を、科学的見地を持って可視化・対処し、
営農に対する不安・職に対する不安を解消していくのみならず、
この地に育まれてきた“食文化”というものが素晴らしいものであると地元の方に再認識してもらう、
こういった“付加価値”を生み出していくことが、
“復旧”ではなく“復興”であると、私は強く感じました。

  

次回、地元にフィードバックする は5月30日にお届けします。


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