原発事故による福島県農業に関する問題。
それは単に農業生産者だけの問題ではなく、その農産物を加工するなど、
いわゆる「食」に関する産業すべてに降りかかった問題です。
今回は、創業時は味噌・醤油製造業からスタートしながらも、
伝統を守りながら現代の食生活にマッチした新商品の開発に取組み、
会津地方産の農産物を積極的に活用している、
会津天宝醸造株式会社 代表取締役社長 満田盛護(みつたせいご)さんにお話を伺いました。
今回は-その3-です。
その1 皆さんの応援が支えに (2013年5月20日公開)
その2 「自分」が「変わる」 (2013年5月21日公開)
その3 信頼を失わないために (2013年5月22日公開)
高まる健康志向
震災後の大きな変化に対応する様々な商品を開発・販売してきたということで、
その点についてお話を伺いました。
震災後の変化の一つに、より健康志向が強まったということがあります。
やはりあれだけ放射線の影響を心配される方が増え、その延長線上でそうなった訳です。
そのこともあって、発酵食品ブームが起き、発酵食品をもう一度見直そうという流れの中で、
去年の2月に「塩糀」を出したわけですがこれがもう大ブームになりました。
そして塩糀の良さをわかっていただく中で、
今後何かに展開できないかということで「塩糀ドレッシング」というものを開発しました。
ドレッシングというとオイルが入るものですが、これは完全にノンオイル。
今の健康志向にもかなうのかなと、満田さん。
震災が起きたからといって何か特別な対応を取るのではなく基本の「変化対応力」を大事にする、
その結果が時代のニーズにかなう商品開発につながりヒットにつながった、ある意味必然ともいえます。
ただ、消費者の方々はどうしても放射能というものが頭に残りますので、
当然、自社で使う原料・出来上がった製品に関しては、外部研究機関の放射性物質検査を受けて、
その検査証そのままをホームページにすべて公開してあります。
これは続けていき、安心していただけるような取組みをやっていきます、と満田さん。
もちろんこの安全性の確認についてもしっかりとカバーしてあり、むしろ福島県において食に携わる方々は、
当然にやるべきこととなっているということが良くわかります。
信頼を失わないために
最後に福島県の「食」に関する産業の方々がより良い復興を果たすために、
今後どういった方向に進めばよいかを伺いました。
非常に難しいテーマだと思いますが、やはり信頼回復にはものすごく時間がかかると思います。
ただ、供給する側の使命としてはより安全なものを美味しく仕上げたものを提供するということを続けていく、
継続していくことによって信頼を徐々に回復させていくということだと思います。
一品たりとも放射性物質の基準を超えたものを流通させないということ、
福島県内で一つでも出てしまうと福島県全体のイメージダウン、
少しずつ回復してきた信頼をまた失うということになります。
食品を供給する会社としては絶対安全なものを提供していくということだと思います。
それを皆さんやっていただければ、徐々に福島県の信頼回復というものは間違いなくできると思います、と満田さん。
やはり、安全性の確認というものは福島県にとって必須のことであるとの言葉。
しかしこれが出来れば信頼回復は間違いないとの言葉は、
福島県・会津の「食」のレベルが高いということを自負していらっしゃる、
そしてそれを体現するような商品を伝統も守りつつ
時代に合わせて生み出し続けてきた満田さんだからこそのお言葉であると、
私は感じました。
福島県の「食」を取り巻く環境は大きく変化しましたが、
その変化に適応し行動することが出来れば、決して悲観することばかりではない、
会津天宝醸造株式会社の実績と満田さんのお言葉からそのことを気付かせていただき、
福島県の食の未来は可能性に満ち溢れていると感じた対談となりました。
会津天宝醸造株式会社 http://www.aizu-tenpo.co.jp/