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シリーズ現場に聞く~株式会社ジェイラップ 代表取締役 伊藤俊彦さん 編 -その6-

 

自分たちを守って見せること

全国の生活者の方に福島県の農林水産物を手に取ってもらうにはどうすればいいかを伺いました。

自分たちを守って見せることが一番説得力があると思う。
あなたたちのためにというよりは、自分たちが安心して食べられるようやくその域に来ました、という方が。

放射性物質吸収のメカニズムを再現できるようになったと、
おだやかに言えるようになれば、相手の心も穏やかにしていくタイミングなのではないか。

眉間にしわを寄せながら自分自身が疑心暗鬼な中では、人は説得できないと思う。
まさしくその通りだと思いました。
自分たちが自信を持って食べられないものは当然受け入れてもらえるわけがありません。

そして現在の福島県では、さまざまな方のご尽力によって、コメの全量全袋検査をはじめとする検査体制が整い、
世界一放射性物質を検査している地域であると自信を持てる、その域まで来ていると思います。

その上で伊藤さんは、うちは「買ってください」とは言わないし言わせない。
「ここまできました」「あとは最終的な判断は皆さんです」と。

最近言っていいというのは
「自分たちの子供たちにも安心して食べさせられるところまで来ました」「あとは皆さんご判断ください」
ということだ、とおっしゃいました。

これもうなずくことしきりです。
いくら検査体制が整っても、「安全・安心」を判断されるのはあくまで消費者の方々なのです。

我々生産者にできることは、ただひたすらに自分にできることをやり、真摯に情報を提供すること、そう私も思います。

信用されるということは時間がかかる。
ただ今回は自分たちの責任で失った信用ではない、自分たちでどうしようもなかった。

でも自助努力しなかったら乗り越えられないという現実がある。
被害者意識で「あれが悪い」「これが悪い」で何とかなるならいいが、そうではない。

これも厳しいですが現実です。
文句を言っていれば状況がよくなるのなら、誰でもそうします。
ですが現状を変えるには行動するしかないのです。

 

逆境が人を作る

福島は明らかに人間力が上がったのではないか、
あきらめないで今戦っている人たちは間違いなく人間的に大きくなっている、
自分自身のイノベーションに取り組んでいる真っ最中なのではないか。

今までは自分たちだけだったが、
もっと地域として広角的な情報発信ができるようになり連携も生まれてきた、と伊藤さん。

確かに、圧倒的な危機を前にして今迄では考えられなかったような地域間・異業種間の連携が高まっている、
それは私もひしひしと感じるところです。

今営業に歩くことよりも、自分たちの作る農産物・農産物加工品の”商品力”をあげようと。

不景気の時に営業したってよそよりも安くしますから買ってくださいと安値売りに行くようなものだから、
しっかりした・ちゃんとしたものが欲しいと言われたときに「あそこのものだね」と言われるものを育てたい。

まさに「替えのきかないものを創る」。
これからの福島県の本当に大事にしていかねばならない考え方だと私は思います。

冷静な判断力・観察力を伴った行動と実践の人、まさにリーダーというにふさわしい方というのが、
伊藤さんに対する私の率直な感想です。

私もいち農業経営者として、たくさんのことを吸収させていただきました。

その中で、印象的だった話を最後に。

 

百姓をなんで継ぎたくないかって、とうちゃん・かあちゃんがかっこ良くないから。
かっこ良ければみんな継ぐ。

とうちゃん・かあちゃんが泣きながら自分たちのために何とかしようとしている姿、
その背中を見て育った子供たちから近未来をしょって立つリーダーが出る。

やはり人間逆境が育てるから。

福島県の農業は日本で一番将来的に可能性がある、私はそう確信しました。

 

 


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