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シリーズ現場に聞く~株式会社ジェイラップ 代表取締役 伊藤俊彦さん 編 -その2-

 

有事の際には「常日頃」が出る

東日本大震災および原発事故について、売り上げも減少し「手痛い洗礼だった」と伊藤さん。
しかし、次のことをじっくり考える、
中長期的なイノベーションのテーマを自らが精査する時間だと前向きに考えれば、
今は良い時間ともおっしゃいました。

とはいえ、現在の心境に至るまで様々な経験をされたのではないかと尋ねました。

その問いに対して、震災のような有事の際の“初動”というのは、「常日頃」がでると伊藤さん。

我々は震災前から、お客様の中には食べ物に対して非常にナーバスな方がいらっしゃる中で、
様々な叱咤激励を受けながら顧客満足度を上げるために色々なイノベーションを積み上げてきた、とおっしゃいました。

もちろん今回の震災・原発事故は桁違いの有事ではありましたが、
常に課題解決に向けて行動を起こしてきたその積み重ね、その経験と自信が、
いかなることにも動じない強い意志を生み出していると強く感じました。

また、精米施設などに大きなダメージを負うことになってしまう中、
頼んでもいないのに取引先の業者が駆け付けてくれて、
修理を行ってくれたことは本当にありがたかったともおっしゃいました。

震災・原発事故後、潮が引くように付き合いのあった業者が離れて行ってしまったという話を何度も聞くような状況の中で、
これは日頃の信頼関係がいかに強固なものであったかの証左です。

そして、その「常日頃」がいかんなく示されたのが放射性物質の問題についてでした。

放射性物質の知識など知る由もない原発事故直後の時期、どのような行動を取ったかというと、
「とりあえず測ろう」ということ。

その開始日が3月17日といいますから、おそらく生産組織の中では屈指の早さだったでしょう。
放射性物質検査を行ったのは原発事故前に収穫された米やハウス栽培の野菜でしたので、当然検出されず、
その検査結果を取引先にメールで送付したところ、原発からの距離もあるし其処までやらなくてもと言われたそうです。
しかし、徐々に明らかになる深刻な事態。
取引先からは検査結果をもらっておいて良かったとの声。

なぜあんなに早く検査するという決断が出来たのか?放射性物質の怖さを知っていたのか?
と取引先の方に尋ねられたそうです。

違う。

これはあなたたちに鍛えられた、年中様々な要求をしてくれてそれに答えてきた結果であって、
原子力災害という特殊な災害だからこういうリアクションが取れたわけではなくて、
「常日頃」です、「常日頃」というのは大事ですね、と伊藤さんはお答えになったとのこと。

自分たちがプロフェッショナルとして、自分たちの職域を全うするということを続けていかないと、
そういうフリをしてみたり時々背伸びをしてみても、続かない。

まさしく有事の際には「常日頃」の行動の結果が如実に表れる、そのことが良く分かる事例として後世に残すべき、
と私は強く感じました。

 

 


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