各業界のキーパーソンにお話をお聞きする「野菜ソムリエ藤田が聞く」。
今回はシリーズで、実際に農林水産業およびその加工に携わっている方々からお話を伺う、
「現場に聞く」を5回に渡ってお送りします。
第一弾 キノコ生産者 中島康雄さん (2013年5月7日公開)
第二弾 水産加工業者 小松浩二さん (2013年5月8日公開)
第三弾 水産加工業者 賀沢信さん (2013年5月9日公開)
第四弾 有機栽培農家 佐藤吉行さん・東山広幸さん (2013年5月10日公開)
第五弾 株式会社ジェイラップ 代表取締役 伊藤俊彦さん (2013年5月13日公開)
今回は-第一弾-
主にエリンギを生産していらっしゃる、いわき市「小川きのこ園」の中島康雄さんです。
エリンギ生産のパイオニア
小川きのこ園は全国でも珍しい、「エリンギ」を主力品種として生産している生産組織です。
今でこそ店頭に並ぶのが当たり前になったエリンギですが、
中島さんが生産を始めた当時は機械化や大量生産が行われていませんでした。
それこそ名の知れた大手キノコメーカーとスタートラインは一緒だったそうで、
何度も失敗しながらノウハウを蓄積する日々だったそうです。
季節にとらわれず常に生産できる体制にするのが課題でしたが、中島さんはもともと農業に関しては門外漢だったそうで、
それゆえに常識にとらわれない方法でチャレンジを繰り返し、常に安定した収量を確保できるまでになりました。
まさに小川きのこ園はエリンギ生産のパイオニアなのです。
順調に規模拡大し高まる需要に増産をしはじめた矢先、原発事故が起きます。
その影響は甚大でした。
当初より「“野生の”キノコ」に関しては放射性物質を蓄積しやすいものが多いということが分かり、
盛んに報道がなされた結果、「“野生”のキノコ」ではない「しっかり管理された“施設栽培”のキノコ」にも、
“キノコ”というだけで危険、という雰囲気が醸成されていきました。
売上げは原発事故前の6割減。
まさに経営の危機です。
当然、生産者の責任による損害ではないので補償はあります。
ですが、この補償がいつまで続くかもわからないし、
そもそも補償されるのだから今のままでいいというのはおかしいともおっしゃいました。
安全でおいしいものだから
この苦境に立ち向かうため、まず取った対策が徹底した検査。
地方自治体で使用されている機器と同等の性能の放射性物質検査器を独自に購入し、
生産物であるキノコと、それだけではなく、栽培に使用するキノコの「培地」を毎日検査しました。
そのデータを取引先に毎日送信しコミュニケーションを取り続けた結果、特に問題のあるデータが出ない限り、
一週間分のデータをまとめて週一回送信する形でいいと、先方より信頼を得ることができました。
もちろん説明を続ければわかってもらえる、必ずしもそういう場面ばかりではなかったそうです。
ですが、できることを行い、それを継続していくともおっしゃいました。
お情けで「買ってもらう」のではなく、「安全でおいしいもの」だから選んでもらえる、
その一念が信頼につながっていく、そのように私は感じました。