「風評被害」。
原発事故後にこの単語をいったい何度聞いたことでしょう?
福島県の「食」にかかわる産業にとって、この「風評被害」こそが、
最も高い障壁のように立ちはだかっているように感じられます。
メディアや書籍・新聞などで見ない日は無い「風評被害」。
しかしながら、そもそも「風評被害」とは何なのか?原因は?解決策は?過去の事例は?
こういったことが語られているシーンはあまり目にしません。
そういった観点から、今回は震災後に書籍「風評被害-そのメカニズムを考える」を執筆された、
東洋大学 社会学部 メディアコミュニケーション学科 准教授 関谷直也さんにお話を伺いました。
本日より3回に渡ってお届けします。
その1 風評被害とは (2013年4月30日公開)
その2 きっかけとして自分たちを振り返ろう (2013年5月01日公開)
その3 意識されていることをチャンスに (2013年5月02日公開)
風評被害とは
まず伺ったのは、「風評被害」メカニズムです。
「風評」=悪いうわさ、ということで「風評被害」というものは悪いうわさが原因ではないかと思いがちですが、
「うわさの被害」と「風評被害」というものは少し違うのです。
早速、興味深い話となったと身を乗り出す私。
「風評被害」という言葉がTVなどで使われるようになったのは1997年のナホトカ号重油流出事故の頃から、
そして所沢市で発生したダイオキシン問題、JCOの臨界事故などで使われてきました。
実際には安全であって全く商品に問題が無いにもかかわらず商品・農作物が売れなくなってしまう、
また観光地として全く問題ないのに観光地に来てもらえなくなってしまう。
「メディアで報道されること・人々の心理・そもそも安全にもかかわらず」、
この三つがそろうことで発生する経済的な被害のことを「風評被害」と言います。
なので「うわさ」による被害とは違うのです、と関谷さん。
確かに、このような形で3つの条件を提示されると形としてとらえにくい「風評被害」の輪郭が見えてくるようです。
もう一つの特徴として、「風評被害」はもともとは「原子力関係者の中」で使われていた言葉です、と関谷さん。
「原子力損害賠償法」ではあくまで「放射性物質が外に漏れだした」場合でしか賠償規定が無く、
「放射性物質が外に漏れだして“いない”」
にもかかわらず生活者の方々が怖がって買ってくれない場合は賠償されなかったため、
それを賠償してもらうために使われていました。
ですからもともと、
原発事故等により、放射性物質の影響がないにもかかわらず、経済的な被害が発生していることが「風評被害」です、
と説明してくださいました。
もっと広範囲な事柄に対して使用されるものだと思っていた「風評被害」という言葉が、
実は原子力関係者の中でよく使われていた言葉だというのは何とも皮肉な話だと、私は感じました。
ともあれ、今回の福島のケースに落とし込むと、
・しっかり検査を行って政府の定めた基準を満たし、安全性の確認が行われている、
にもかかわらず商品・農作物が売れず経済的被害が出ていること。
・基準値を超えた商品・農作物、作付制限・出荷制限・摂取制限が行われている商品によって生ずる経済的被害。
この2つを、「風評被害」と「実害」という形で明確に区別しなければ“混乱”が生じることは良く理解できると思います。
そして、「風評被害」というものは、単に私たち“生産者”と実際に商品を手に取られる“生活者”、
その両者間だけで起きるような単純なものではない、このことも明示されていると感じました。
次回、きっかけとして自分たちを振り返ろう は5月1日(水)にお届けします。