米どころ福島。
そしていい水もあるとくれば、「日本酒」も素晴らしいものが出来上がります。
そして、福島県は日本酒生産量・消費量ともに全国トップクラス。
今回はその「日本酒」に焦点を当ててみました。
「日本酒」産業は農産物加工品でもあり嗜好品でもあるという側面をもっているため、
今回の震災・原発事故において大きく翻弄された産業の一つです。
その点も踏まえて、福島県酒造組合会長 新城猪之吉さんにお話を伺いました。
今回は-その2-です。
その1 自分たちの声を届ける (2013年4月24日公開)
その2 世界に目を向ける (2013年4月25日公開)
その3 近づければいい (2013年4月26日公開)
世界に目を向ける
ただ、その応援ムードは長くは続きませんでした、と新城さん。
一年もたつと、お呼びがかかる回数が減り、さらに呼ばれた先での売り上げも目に見えて減っていったそうです。
普通でしたら戸惑い、気落ちしてもおかしくない状況ですが、福島県の酒蔵は強かった。
国と県が「外に売りに行く」いわゆる輸出することに関して補助を出すという話があり、それに手を挙げたのです。
震災後一年たち最初に輸出をしたのはタイ。
震災に対する支援を受けて開かれた大使館での御礼のパーティに日本酒を振る舞うということで、
その日本酒を福島県から出させてほしいとお願いしたところ快諾され、5社が日本酒を提供し、
現地の要人の方に大変喜ばれたそうです。
それだけではもったいないと、現地の日本食レストランの方を招待して試飲会を行ったところ、
評価されて今でも輸出が続いている会社があるとのこと。
単なる一過性のイベントで終わらせないしたたかさは、私も学ぶべきところであると思いました。
そして次に向かったのは、北欧のスウェーデン。
気候的に寒いこともあり熱燗が良いだろうし、ニシンの酢漬けを食べるということは、
日本酒しかないだろうとの考えがあったそうです。
とはいえ、初回ということもあり日本酒の知名度はほとんどないのが現状。
それでも寿司屋はどんどん増える一方である。
そのことを実感し、世界中に拡大し続ける日本食には日本酒がありきというマーケットがあり、
その先鞭をつけてきた、と新城さん。
福島県の農林水産業を取り巻く環境から言えば、積極的に営業を掛けること自体尻込みしてもおかしくありません。
そんななかで、「海外戦略」を練って進出の先鞭をつける、その姿勢はただ舌を巻くばかりです。
転んでも、いえ転ばされてもただでは起きない、酒米も生産している生産者としては心強い限りです。
継続すること
国内においての対策についても新城さんはおっしゃいました。
我々の放射性物質検査体制について情報発信していくことは継続していく。
とはいえ、状況が好転するまでにはまだまだかかる。
首都圏においてお酒を試飲して頂きお客様と交流を深める「酒の会」を行う時には700名を数えるほどたくさん来て下さる。
もともと福島県を応援して下さる方々ばかりだしマーケット全体から言うと少ない数かもしれないが、
こういったことの繰り返しを行うことで信頼を取り戻していく、そういったお話でした。
厳しい現状を真正面から見据えながらも、信頼を取り戻すため地道に辛抱強く活動していく覚悟が、
その言葉の端々から感じられました。
次回、「福島が元気だということを見せたい」は4月26日(金)にお届けします。