震災後、会津地方の原乳は一時期、出荷制限がとられる状態に陥りました。
はたして、その後の様子はどうなのだろうと、とても気になっていました。
今回は、会津にこだわり、会津の酪農家さんの生乳のみを扱う会津中央乳業さんへ行ってきました。
開口一番、
「牛乳は搾りたてを鍋で沸かして飲むのが最高です。」とお話しをしてくださったのは
将来の三代目社長を目指し頑張っていらっしゃる営業の二瓶さん。
会津中央乳業さんの牛乳は鍋で沸かした味を出すためにゆっくりと殺菌(保持式殺菌・85℃15分間)しています。
牛乳は肉と同じでたんぱく質からできているので、柔らかくまろやかな味、ミディアムレアの牛乳を目指しているそうです。
主流の超高温瞬間殺菌(130℃2秒間)に比べると、とても時間がかかります。
一日の生産量は10トンで、これは会社としてはかなり少ない量だそうですが、
美味しい牛乳を届けるには丁度よいとおしゃいます。
昭和60年代の安売り競争から抜けることができたのは、この特別な殺菌法のおかげだったと伺いました。
そこで生まれたのが「べこの乳」です。
価格的には高めですが、まさに鍋で沸かした味です。
良質の生乳をもとにした製品は県外にもファンは多く、順調に売上げを伸ばしていたそうです。
しかし、震災後、県外の取引先はゼロになり、地元の取引先も震災後の出荷停止の間に売場がなくなっていたと伺いました。
会津の酪農家さんが出荷制限になった時、休業も考えたそうですが、
ここで止めたら酪農家さんが帰ってこれなくなってしまうと思い直し、近県から仕入れた生乳を販売したそうです。
その時のパッッケージは「会津」の文字をはずし、「牛乳」とだけ書かれたものです。
とても寂しかったと振り返っていらっしゃいました。
県外に関しては、震災前の取引先は殆ど戻ってはいない状態だそうですが、
新規の営業を行い半分程度にまで戻せたそうです。
しかし、原発事故が収束したわけではないので、手放しで喜べる状態ではないとも話されていました。
そして、「放射性物質の影響があるから飲まないで。」と言われて育った子供たちの今後の
牛乳に対するイメージがどのようになるかも危惧されていました。
それでもこうして試練を乗り越えられるのは良い酪農家さんに恵まれているからで、
良い商品がある限り復活できるともおっしゃっていました。
そんな二瓶さんに、将来の夢を伺いました。
「東京に直営店を開き、べこの乳と会津の産品を販売し、美味しいと気に入っていただけたら嬉しいです。
そして、それが会津の観光に繋がっていけるように頑張りたい!前進あるのみです!」
と力強くおっしゃっていました。
戦後の時代、雨の日も雪の日もリヤカーを引いて牛乳を配達し、会社を築きあげたという創業者、
二瓶さんのお爺様のことを伺いながら、お孫さんである二瓶さんが引き継いだものは、
美味しい牛乳を届けたいという想いとフロンティア精神だと感じました。
会津中央乳業株式会社
【住所】福島県河沼郡会津坂下町大字金上字辰巳19-1
【電話】0242-83-2324
【URL】 http://www.aizu.ne.jp/aizubeko