
2016年11月8日
いわき市は平坦な土地が多く、日照時間も長いため、様々な作物が栽培されています。特に、野菜や果物の栽培にとても適した気候だと言われています。
その一方、お米の栽培についてはあまり行われていません。そのような中、毎日食べるお米を、生まれ育った場所で栽培したいと考え、様々な研究を重ねてこだわりの一粒を作る方がいらっしゃいます。
今回は、いわき市にある「あじま農園」の安島美光さんにお話を伺いました。
安島さんは、兼業農家として家族で長く野菜を作ってきました。おいしい野菜を栽培することはできるものの、ずっと農薬のことが気になっていていたのだそうです。しかし、無農薬で作物を栽培することは決して簡単なことではありません。日々、害虫や雑草と戦い続け、手間もかかるため、販売価格も上がります。
そこで、自身が専業農家になったことを機に、有機栽培に挑戦することにしました。

栽培する作物は、毎日口にするお米です。広大な敷地に美しい穂が実っていく姿に男のロマンも感じて、挑戦するならお米にしたいと思ったのだそうです。
有機栽培は決して簡単なものではありませんでした。兼業農家時代から勉強はしていたものの、実際に行ってみると日々雑草との戦い。少しでも雑草が成長してしまうと稲が負けてしまうため、毎日手作業で雑草を取ったこともありました。現在では、専用の機械で定期的に雑草を取り、対策を行っています。
また、有機栽培の枠組みでは化学肥料は使えないため、安島さん自身が手作りで肥料を作ります。
当初はたっぷり栄養を与えて、大きな粒のお米を作りましたが、実際に食べてみるとあまりおいしいものではありませんでした。実は、お米はタンパクを多く含むと食味が落ちてしまうのだそうです。そのため、チッソ成分を極力少なくし、タンパクの数値を下げる必要があります。現在では、米ぬか、油かす、魚かす、大豆などを発酵させた肥料をバランスよく与えることで食味を上げることに成功しました。
害虫から稲を守るためには、稲を強くする必要もあります。通常であれば、25日間かけて苗を育て、それを田植えします。苗は葉が柔らかく、害虫が食べたがります。この苗を「稚苗」といいます。
しかし、安島さんは45日間かけて苗を育ててから、田植えをします。通常よりも大きく育った苗は葉が固く、害虫の被害に合いにくいのだそうです。こちらの苗は「成苗」といいます。
20日間の違いですが、苗を植えるポットや田植え機は各々専用のものを使用しなくてはなりません。成苗での田植えはあまり一般的ではないため、ポットや機械も値段が高いそうです。
このような様々な手間をかけてようやく収穫することができるのです。

収穫風景
いわき市では、震災の被害もありました。安島さんがお米を栽培している地域でも大きな地震もありましたが、それ以上に大きな被害は風評による影響でした。その時は有機栽培を始めて3年目の年で、安島さん自身の栽培方法も確立され、有機栽培の認定を正式にもらった直後のことだったそうです。お客様は一気に減り、お米の値段も下がり、安島さんもこの場所でお米が栽培できるのか不安でした。しかし、検査の結果は問題がなかったため、栽培をできるところまで続けようと決意しました。全国で行われるイベントなどに参加することで、少しずつ新たなお客様が増え、現在では毎年完売するほどの人気のお米となりました。たゆまぬ努力と真摯な姿勢、そしてなによりお米のおいしさを皆さんにご評価いただいた結果だとおっしゃいます。
安島さんのお米はインターネットや、いわき市の直売所ワンダーファーム、東京のお土産館MIDETTEなどで購入することができます。

「有機栽培コシヒカリ天地(あめつち)」です。
今年もとてもよい出来だと仰っていました。安島さんの栽培するお米はコシヒカリで、適度な粘りと甘みがあります。また、毎年食味コンクールで高い評価を受けており、自信作です。
「あじま農園」の安島美光さんです。
おいしいお米を作ることはもちろんですが、有機栽培で自然環境や生態系を守る農業を行っていきたいとお話して下さいました。
ぜひ、今年の新米を召し上がってみてくださいね。

あじま農園
【住所】福島県いわき市山田町林崎153-1
【TEL】0246-63-3896
【MAIL】info@ajimanoen.com
【WEB】http://www.ajimanoen.com/
【営業時間】10:00~18:00
【定休日】土日祝