
2016年8月17日
いわき沖で古くから続けられてきた素潜り漁。現在は、東日本大震災の影響により、今まで通りの漁ができない状況が続いています。
今回は薄磯地区で伝統の素潜り漁を守る漁師のみなさんと、鮑雲丹増殖協議会長の鈴木一好さんを訪ねました。
素潜り漁は古くから続けられている漁法で、多くの漁師さんは代々素潜り漁を行っている家に生まれ、幼い頃から海や漁が身近な存在なのだそうです。
海で遊びながらだんだんと漁を覚え、親から子へと受け継いできました。
素潜り漁というと海女さんのイメージが強いですが、いわき沖は潮の流れが早く、波も高いため、過酷な環境に挑む体力的な関係から、素潜り漁師は男性です。
いわき沖薄磯地区は素潜り漁でアワビとウニを獲ることができます。アワビは5月頃から9月まで、ウニは5月頃から7月まで漁を行います。
震災前までこの期間は毎日のように漁を行っていましたが、震災後は地震の影響で漁場は潮の流れが変わり、地盤沈下も起きてしまったため、かつてのような漁はできません。
また、津波によって今まで代々守り、育ててきたアワビやウニが流れてしまったため、震災後に新たに稚貝や稚うにを海に放し、養殖を行っています。食べられるまでに成長できるアワビやウニは約3割で、獲れるまでは4~5年かかるため、今は制限しながら漁を行っています。


薄磯地区で素潜り漁を行う漁師さんは10人程。現在は2つのグループに分かれて、交互に2週に一度の漁に出ています。黒のウェットスーツを着て、準備ができると入江を出発します。
私が伺った日は水温が14~15度ありましたが、日によっては10度以下の冷たい海に入ることもあるようです。
海の中に入ると3~4メートル程潜り、岩に張り付いているアワビや、鋭いトゲに覆われたウニを獲っていきます。ベテランの漁師さんは10メートル以上潜ることもできるそうです。また、みなさん1分程潜り続けることができます。


深く潜るには人間の体は軽く、浮いてしまうため、漁師のみなさんは重りを付けています。
この重りは9キロあり、腰に巻いて使用します。体重に応じて重さを変える必要があります。
さらに、漁を行う道具も持って潜ります。

アワビを獲る時に使うナサシという道具

ウニを獲る時に使うカギボウという道具
入江から出発して1時間ほどで漁師のみなさんが戻ってきました。この日の海の中は視界が良好で、漁がしやすかったそうです。しかし、荒れた海の時には砂が舞い上がって1メートル先も見えないような日もあります。危険も伴った仕事なので、体力をしっかりと付けて漁に臨む必要があるとのことでした。
獲れたアワビやウニはすぐに市場に出せるわけではありません。アワビは4~5日、ウニは一晩砂抜きをします。特にアワビは獲るときに傷が付きやすいため、そのまま死んでしまうものもいます。生きたまま市場へ出荷するため、数日様子をみる必要があるそうです。



獲ってきたばかりのアワビやウニはとても新鮮で、よく見ると動いています。アワビはゆっくりと波を打つように動き、ウニは上下左右にトゲを動かしています。ウニは耳を澄ますと「ガサガサ」と音がしています。
「新鮮なアワビとウニは本当においしいよ!」とみなさん仰っていました。
鮑雲丹増殖協議会長の鈴木一好さんです。
とにかく、震災前の薄磯地区の漁場を取り戻すことが、第一優先だと話していました。そのために、漁師さんたちと協力をし合って、少しずつ稚貝や稚うにを放し養殖し、制限しながら漁を行っています。
おいしいアワビやウニを震災前のように多くの方に届けられるようになりたいと、漁師のみなさんが願っています。
ぜひ、お店やスーパーなどでいわき沖のアワビやウニを見かけたら、召し上がってみてくださいね。
