
2015年11月1日
いちじくの生産が盛んな新地町に行ってきました。
いちじくは地元の方々にとっては大変馴染み深い食材で、家庭では甘露煮にして食べることが多いそうです。9月~10月に収穫が行われるため、秋の味覚としてこの時期を楽しみにしている方がたくさんいらっしゃいます。
私が伺った時期もちょうど収穫、出荷準備が行われていました。
畑を見せて下さったのは、10年程前からいちじくの栽培を行っている、新地いちじく部会長の菅野修さん、淑子さんご夫妻です。
お二人は、平成16年に、いちじくの茎や葉を土に挿して繁殖させる“挿し木”を行い、平成17年に畑に苗を移して定植を行いました。その後、平成19年からは収穫ができるようになりました。
新地町の多くの生産者はホワイトゼノアという品種のいちじくを栽培しており、菅野さんもこのホワイトゼノアを栽培しています。ホワイトゼノアは加工に向いており、その用途は生食はもちろん、ドライフルーツ、ジャムや製菓用など様々です。



いちじくの木は2メートルほどの高さがあり、伸びた枝にはたくさんの実がなっています。
収穫は、実が少し赤みを帯びてきた頃に行い、この頃の実は、引っ張るとぽろんと枝からとれます。
いちじくは痛みやすく長時間の輸送が難しい作物なので、早めに収穫をして加工用に使用されることが多いそうです。


また、新鮮な実は、実の先から乳白色の液体が出てきます。これはタンパク質分解酵素のフィシンというもので、フィシンは大変刺激が強く、手で触れると肌が荒れてしまうため、収穫後は一度水洗いを行ってから出荷準備を行います。
収穫されたいちじくはサイズごとに分けられ、袋詰めされて出荷します。
菅野さんの一部のいちじく畑は、震災による津波の被害を受けました。
被害のあった畑には、炭酸カルシウムを撒いて海水を中和させて対策を取りましたが、完全には元の畑に戻らないそうです。
海水を被らなかった畑と比べると木の成長が止まってしまい、もう大きくなるのは難しいようです。

津波被害を受けた畑
菅野さんご夫妻が10年程前にいちじくを栽培しようとしたきっかけは、お米の生産調整を図る減反政策でした。元々お米を栽培していたため、減反政策によって使われない田んぼが増えてしまうことを懸念して、何か他の作物を田んぼで栽培できないかと考えたそうです。
そこで、新地町で栽培が行われていたいちじくに目を付け、栽培を開始しました。いちじくの栽培が軌道に乗ってくると、新地町の他の農家の方にも苗を無料提供し、いちじく栽培を勧めました。すると、だんだんといちじく農家が増え、現在では、約80軒の栽培農家の方々がいらっしゃるそうです。そういった経緯を経て、いちじくは新地町の特産品になっていったのだそうです。
新地町の直売所「あぐりや」にはもっといちじくのおいしさを多くの方に知ってもらおう、ということで6次化商品の販売も行っています。


いちじくのアイスクリーム、「いちじく愛す」です。「新地町の人はいちじくを愛している」という想いから名付けられました。平成19年から販売が始まり、現在では新地町内外の方から大変人気の高い商品となりました。
この「いちじく愛す」の完成には2年程の時間がかかったそうです。
当時、いちじくを一番おいしく提供できる方法は何かを考え、乾燥いちじくやコンポートなど様々な試作品を作りました。そして、たどり着いたのがアイスクリームでした。
これだ、という味を決めるまでにも時間がかかったそうで、何度も試作し、イベントなどで配ってお客さまの感想を聞いて現在の味に決まりました。

アイスの中には甘露煮にしたいちじくが混ぜ込まれています。
いちじくの味だけでなく、食感も感じてもらえるように果肉を大きめにカットして入れているそうです。バニラの甘さといちじくの甘さが絶妙なバランスで、果肉もしっかり感じることができ、甘い香りが口に広がります。
「あぐりや」では、いちじくの収穫時期には生のいちじくも販売しています。
ご家庭では、やはり甘露煮にして食べるのがオススメだそうです。
新地町のみなさんが愛するいちじくをぜひ召し上がってみてくださいね。

有限会社 あぐりや
【住所】福島県相馬郡新地町小川字ソリ畑27
【TEL】0244-62-5220
【定休日】1月1日~3日
【営業時間】9時~18時