福島だからできる恩返し
こういった時だからこそ、我々農家は即効性がありしかも低コストで速やかに行える知見をまとめておくことが必要だ、
世界のどこかで起きる可能性がある原子力災害の時のために。
福島は世界中の人たちから様々な形で支援を受けて復興しようとしている。
その恩返しというのは、福島で踏ん張った人たちが残した知見で救われたと言ってもらえるような、
一般の方が活用できるツールを精査してまとめておく、近未来における社会貢献なのではないかな、と伊藤さん。
もちろん、今後原子力災害というものがあってはなりません。
しかし、いざという時のために、しっかり知見をまとめて、世界の知見とすること、
これは今の福島だからこそ出来ることです。
私たちは、チェルノブイリにおいて得られた知見によって多くの事柄について救われました。
このことを良く考える必要があると、私は思います。
思ったらやれ、やってから言え
「自分以外のものを守るために学ぶ」ということで、これほど人間って吸収できるんだってことは驚きだった、
自分がこんなに勤勉に学ぶ潜在能力があったなんて。
こういう逆境がなかったら、生涯そういう自分と出会わずに終えたんだろうけども、
諦めないということはそういう“自分の知らない自分”を知ることも、と伊藤さん。
このあと楽しい人生につながっていくのかさらに高いハードルが与えられてしまうかはわからないけども、
そういうことを次の後輩たちに語っていくことで、今は俺がリーダーシップをとっているけれども、
いつかは誰かがやらなければならない、みんなその誰かを目指してくれと、
事故当初からの一年はそんな年だったとお話しされました。
混乱期の中で、自分のできることをやりつつ・学びつつ、現場に基づいた行動をとってきた、
シンプルだけどなかなかできないことを地道にやってこられた、そのように感じられましたと感想を述べました。
伊藤さんはその返事として、俺も思ってた・考えてたっていうのは世の中に掃いて捨てるほどある話で、
実際にやってみなければ“仮説”は“仮説”。
思ったらやれ、やってから言えと、常々言っている。
「学ぶ」「実践する」「観察する」「改善する」だと。
まさに、有言実行とはこのことでしょう。
「技術」とは
放射性物質が検出されるような農産物を“意識して”作らないのが「技術」なんですよ。
「たまたま」が風評を作る、その怖さを福島県の農家はみんなわかっている、と伊藤さん。
モニタリング検査結果をご覧いただければわかるとおり、福島県の農産物から放射性物質が検出される例は非常に少ない、
まさに「たまたま」です。
しかし、そのことに甘んじて“意識しない”でいるとその「たまたま」が発生し、
それがセンセーショナルに取り上げられ、大きなダメージを被る、なんども我々は経験してきました。
「たまたま」を引き起こさないよう「技術」を磨く。
まさに我々農家に常に求められていることだと、身が引き締まりました。