
2016年8月1日
より良い農業経営の在り方を模索し続け、地域における農業の活性化に力を注がれ、第56回福島県農業賞(農業経営改善部門)を受賞された花き専業農家を営む室井豊一(むろいとよいち)さんから室井さん流の農業経営についてお話しをうかがいました。
「農家の人は作るところから始めると思いますが、私は逆で。経営においてこれくらいの収益をあげるためには何を作ったらいいかを考える。そこから農業経営が始まるという発想です。」と話される室井さんは専業農家の9代目として生まれました。
福島県農業短期大学校を卒業後、「家を継ぐ前に一度外へ出てみなさい。」というお父様の勧めもあり、千葉県職員を経て昭和53年から本格的に農業経営に携わっていらっしゃいます。
当時は葉タバコの栽培をされていたそうですが、もっと収益性の高いものを模索しなくては将来先細っていくのではないかという危機感から、試行錯誤の歴史が始まります。
しがらみにとらわれることのないフットワークの軽さが室井流
ぶどう作りを手始めにアスパラガスの栽培にも挑戦したそうです。しかし、この地の気温はぶどう作りには適していないと判断、早々に見切りをつけることに。
続いてアスパラガスも害虫がつきやすく収益性を考え断念。
その後、農業短期大学校の畜産科で学んだ経験から、牛を飼い始めるも牛肉とオレンジの輸入自由化による価格低下で、収益性は見込めないと撤退。
見切りをつけるのは早く、時には飽きっぽいと言われることもあったそうですが、早期に判断しなくては経営の体力がなくなってしまうという考えでの行動だったと振り返っていました。
「しがらみとか今迄こうだったとか言わないで、基本的な事でもどんどん変えていく」それが室井流なのだそうです。
高い収益性を見込める農業を目指す日々の中で、一日の気温の高低差が10度もある地域では作物の色がきれいに出るという点に注目し、平成元年、花き栽培に本格的に取り組むことになります。
地域に適した花を選ぶことから始め、農業経営を成り立たせることができるような、そして更に全国と勝負できるような花を求めてきました。
最良を求めて、挑戦し続けるのが室井さんのポリシー。
現在は季節に合わせた14種類の花を栽培しており、中でも「カラー」や「カスミソウ」は南会津町がとても適した気候で、品質の高い花を出荷することができるのだそうです。


まさに全国と勝負できる花です!
冬期間の雇用の確立が経営改善の完結。
一年のうち4~5ヶ月の間は農業から離れなくてはいけない雪深いこの地において、年間を通しての雇用を確立するということを解決できないと経営の改善は完結しない。
ハードルも高いけど、諦めたてしまったら、苦しい農業を強いられていた親の世代に戻ってしまうことになり、集落を維持していくことも難しくなってしまうという室井さんの言葉が大変印象的でした。
一人では無理でも地域の人たちと力を合わせ、小さい産地の良さを生かしたフットワークの軽い産地として勝負していきたい。そして、自分だけではなく地域全体がよりよい農業経営ができるようになることが目標だと、常に前を向いて進む室井さんの言葉の力強さに圧倒されました。


同じ地域に住む人々が助け合いながら農業を営む姿は今も昔も変わることはなく、お互いの感謝の心が大切だと、10代目となる息子さんにいつも諭しているとおっしゃる室井さん。
農業は技術だけを受け継いでいくのではなく、農業に対する姿勢も受け継いでいくことがとても大切なのだと感じました。
古き時代から受け継がれた助け合いの精神を大切にしながら、新しいことに挑戦していく室井さんのしなやかさ、力強さが頼もしいです。
物静かな雰囲気の中に秘めた情熱をひしひしと感じ、是非のこの地で勝ち続けて欲しいとエールを送りたくなりました。

第56回福島県農業賞受賞 室井豊一(むろいとよいち)さん